
東川町の広大な田園地帯に、板張りの建物が2棟並んでいます。その名は「青SORA Terrace」。青空と田んぼの緑が織りなす風景からつけられたこの名前の通り、宿から見渡せる景色はまさに北海道そのものです。

1日1組限定の完全1棟貸しというスタイルで営まれているこの宿のオーナーは、渡さんご夫婦。製薬会社を55歳で早期退職し、奈良出身の奥さまとともに大阪から東川町へ移住。「宿をやってみたい」という若い頃からの夢を、人生の後半戦でついに形にしました。
宿の魅力——北海道の自然を「独り占め」できる空間

屋久島の地杉を使った板張りの外観は、東川の豊かな自然に溶け込むように佇んでいます。室内に入ると、シラカバをふんだんに使ったフローリングと壁が出迎えてくれます。

ソファに腰を下ろして窓の外を眺めると、田園風景の向こうに旭岳や十勝岳の雄大な姿。四季ごとに表情を変えるその景色に、都会の慌ただしさや日常のストレスはどこかへ消えてしまいます。

冬には薪ストーブが活躍します。ゆっくりと燃える炎と、薪がはぜる小さな音。ここでしか味わえない静かな時間です。

キッチンや各種家電も完備されているので、東川産のお米や野菜を使って自炊を楽しむこともできます。食事の提供はありませんが、予約時に相談すると東川町内のおすすめのお店まで送迎してもらえる心遣いも。洗濯機付きの清潔な洗面所も旅行者には嬉しいポイントです。
車で10分ほどの場所には温浴施設「キトウシの森 きとろん」や「森のゆ 花神楽」があり、日帰り入浴も楽しめます。

ロフトから見渡す景色も格別で、シンボルのシラカバはオーナーがアーケンの藤原さんと直接森へ行き、一本一本選んだものです。
大阪からご友人が遊びに来た際に「久しぶりにぐっすり眠れた」と話したというベッドも、宿泊者から好評です。
なぜ東川に移住を?
渡さんがもともと宿の候補地として考えていたのは美瑛町でした。全国有数の観光地である美瑛は集客面では申し分ないものの、「実際に生活する場所」として考えると少し賑わいすぎているかもしれない——そんな思いから候補に浮かんだのが東川町です。

「自然も水も綺麗で、北海道らしい静かな環境と日常の利便性が両立している」という点に惹かれ、まず1ヶ月の移住体験を実施。実際に暮らしてみると、景色の美しさ、地域の活気、そして役場の対応のよさまで、期待以上のものがあったといいます。奥さまも「暮らすなら東川町」と口をそろえるほど、二人でこの町に惚れ込みました。
ただ、「大雪山と田園を遮るものなく眺められる土地」という条件を満たす場所を見つけるまでには3年を要しました。粘り強く待ち続けた末に巡り会えた土地は、渡さんの希望にぴったりのものでした。
アーケンへの依頼——「200で返ってきた」提案力

土地が決まり、いよいよ自宅と宿の建設へ。ウェブサイトやSNSで情報を集め、複数の工務店に要望を伝えました。
「ほかの工務店さんの提案は想定の範囲内でしたが、アーケンの太田さんの案は自分の想像を遥かに超えていました。100を伝えたら200で返ってきた感じで、ここだと思いました」と渡さんは振り返ります。

決め手はもうひとつありました。「長く付き合っていける相手かどうか」。大阪で家を建てた工務店と今も関係が続いているという渡さんは、家づくりは完成して終わりではないと実感していました。アーケンの藤原さん、太田さん、現場の大工さんたちと実際に関わってみて、「ここなら大丈夫」という確信を得たといいます。
自宅へのこだわり

東川の景色を最大限楽しめるよう設けた大きな窓は、自宅でのお気に入りポイント。365日変わり続ける外の風景を写真に収めることが、移住後の新しい趣味になりました。

大阪時代には条件が合わず断念していた薪ストーブも、念願叶って導入。フローリングにはシラカバを採用し、大阪から訪れた友人たちは「足触りが気持ちいい」と喜んでいるそうです。「北海道といえばシラカバ」という道外の人のイメージを、自宅で存分に体現した空間になっています。


移住後はストレスのない生活を送れているという渡さん。大切にしてきた人間関係も変わらず続いており、大阪からもよく友人が訪ねてきます。
「家づくり以外の部分でもアーケンには大変お世話になりました」と渡さんは話してくれました。
移住・土地探し・建設・宿の開業まで、一連のプロセスをともに歩んだパートナーへの信頼が言葉ににじんでいました。若い頃に抱いた「宿をやりたい」という夢を、55歳という節目に思い切って実行に移した渡さんご夫婦。東川町の青空の下で、二人の新しい暮らしと仕事は今まさに動き出しています。
青SORA Terrace
所在地:東川町西8号北22 電話:080-8704-3682
