
東川町の田園地帯を走っていると、ひときわ目を引く2つの塔のような板張りの建物があります。東京・広尾で人気ビストロを経営していた佐野健さんが、家族とともに東川町に移住し、2024年4月にオープンしたオーベルジュ「東川PERICAN(ペリカン)」です。

オーベルジュとは宿泊できるレストランのこと。北海道産ワインと料理を、東川の雄大な田園風景を眺めながら楽しみ、そのまま宿泊できる施設です。
北海道ワインへの情熱が移住のきっかけに

佐野さんは東京在住のころから毎年夏休みに北海道を訪れ、ぶどう農家の収穫を手伝っていました。余市や岩見沢のワイナリーを巡るうちに北海道ワインの可能性に魅了され、いつかここで店を開きたいという夢が膨らんでいったといいます。

移住先として東川町を選んだ理由のひとつが、東川産のキトウシワインの存在でした。町外では手に入らないこのワインを買い付けるために何度も東川を訪れるうちに、この町の空気と人の温かさに引き込まれていったのです。
江丹別のレストランchiraiとの出会いがアーケンへの扉を開いた

佐野さんが東川移住を本格的に考え始めたころ、旭川・江丹別のレストラン「chirai(チライ)」の存在を知りました。飲食店運営者の目線で見ても、素晴らしい空間と感じた佐野さん。その建物を設計・施工したのがアーケンだと知り、藤原社長に電話を入れたのが最初の接点でした。
机より現場。藤原社長との”ドライブ打ち合わせ”

佐野さんが振り返るのは、藤原社長との打ち合わせのスタイルです。「机に向かって話し合ったことはほとんどない」と笑います。藤原社長は佐野さんが東川に来るたびに迎えに行き、農家、職人、飲食店など、地域のキーパーソンたちを紹介しながら車で東川を案内し続けました。食材の仕入れ先探しから補助金申請まで、店づくりを総合的にサポートするスタイルがアーケンの真骨頂です。
シラカバを伐り、カウンターに変えた職人たちの物語


店内で特に印象的なのがシラカバのカウンターです。木こりの清水さん、家具職人の鳥羽山さん、藤原社長とともに、佐野さん自身も突哨山でシラカバの伐採に立ち会いました。「木が倒れる瞬間、血がぶわっと沸き立つような感覚があった」と佐野さん。その体験がウォールナット予定だった内装をシラカバ中心に変えた決断につながりました。エントランスに立つ4本のシラカバも清水さんが手がけたもの。異なる業種の職人たちの思いが一致して生まれた空間です。
東川PERICANで過ごす一夜

1階には調理もできる薪ストーブ(アイアンドッグ製)が設置され、前の店舗の5倍の広さを誇る厨房で佐野さんが腕を振るいます。2階の宿泊部屋では、シラカバのカウンターに北海道ワインとおつまみを置き、大雪山や田園地帯を望む眺望を楽しめます。窓のブラインドは電動で壁内に収納できる設計で、景色を最大限に活かしています。

東川PERICANは、東川という土地と、そこに集う人々の情熱が凝縮した一軒です。
東川PERICAN(ペリカン) 所在地:東川町西8号北26番地 TEL:0166-56-8846
