東川町・ノエル デリカテッセン 大工と職人が心を込めた東川町の注文住宅兼店舗

旭川の隣町、東川町の農業地帯にひときわ目を引く住宅が2018年2月に完成しました。鉛筆のような、あるいはムーミンハウスを思わせる塔が印象的なその外観は、日没直後には濃いブルーの空と黒褐色の壁、白い雪と窓枠、オレンジの灯りが美しいコントラストを描きます。

東川町で農業を営むYさん夫妻の注文住宅です。設計・施工はアーケンが担当しました。


家を建てたきっかけ

Yさんは東川町生まれですが、東京の会社でサラリーマンとして10年を過ごしました。東京で結婚し、ずっと都市で暮らすつもりでいましたが、5年前に東川に戻って父の農業を継ぐことを決意。東京育ちの奥さまも、その選択についてきてくれました。

東川町には「帰ってこいよ住宅」という町営住宅があり、5年間はそこに暮らしていました。新築で家庭菜園もできる居心地のよい家でしたが、畑まで車で15分ほどかかることがネックでした。農業者として畑の近くに住みたいという思いが募っていきました。

もう一つの理由は、奥さまへの思いです。

Yさん:「東京育ちの妻は、私と結婚したとき農業を継ぐつもりはなかった私についてきてくれて、さらに急な方向転換にもついてきてくれました。今度は私が、妻が楽しく暮らせるように、料理をきっかけに東川の人とつながれるような場を作りたいと思いました。」


農業者の暮らしを支える間取りのアイデア

Yさんは米を主体にトマトやトウモロコシを生産する農業者です。毎日の仕事を終えると、服や靴に泥汚れや埃がついています。以前の家では、それを室内に持ち込んでしまうのが悩みでした。

この家では玄関とは別に勝手口を設け、そこで衣類と靴を脱ぎ、隣の浴室でシャワーを浴びてから室内に入れる動線を設計しました。農業者の日常に寄り添った間取りです。

音楽好きなYさんのために書斎には防音設備も設置。2階には2部屋と大容量のクローゼット(ウォークイン4帖・両側ハンガー付き)を確保しました。


妻の夢を形にしたキッチンと吹き抜け空間

奥さまが一番こだわったのはキッチンと、人を招ける空間です。

「将来的に、料理をきっかけに地域の人とつながれる場を作りたい」という夢を持つ奥さまのために、業務用キッチンを導入し、2帖の食品庫も確保しました。さらに来客用玄関から直接入れる7.25帖の吹き抜け空間を設け、塔の中にいるような開放感のある部屋が生まれました。

格子の窓にアンティークな照明が映える、こだわりの空間です。


機能美を備えた洗面室

ダイニングの裏側には洗面室があります。照明・蛇口・木の素材など、つい見た目のデザインに目が行きますが、この洗面室は実用性も徹底的に考え抜かれています。水はねしにくい深めの洗面ボウル、収納力のあるキャビネット、大きめの鏡と洗面台。おしゃれでありながら、日々の使い勝手にも妥協がありません。


コストを抑えた大工の造作棚

ダイニングの壁にはグリーンのアクセントカラーと造作の飾り棚が設けられています。オーナーが雑誌で見つけたアイデアをもとに設計者が起案し、大工が制作したものです。

使った材料は構造材・下地材として使われる規格品のツーバイ材。壁を棚の形状に合わせて凹ませることで室内への圧迫感を抑え、ダークブラウンに塗装して仕上げました。家具職人ではなく大工が手がけたため、コストも抑えられています。吹き抜け空間にも同様の造作棚が設けられ、統一感のある空間になっています。


アーケンを選んだ理由

はじめはハウスメーカーの展示場を見学したり、別の住宅会社にも相談していたYさん夫妻。地域のつながりが深い友人の「アーケンさんに相談してみては」という一言がきっかけでした。

奥さま:「藤原社長は、価格や防音、料理に関する設備、住宅ローンなど、こちらが知りたいこと以上に丁寧に、しかも早く回答してくれました。ちょうど農繁期で私たちが忙しい時期でしたが、打ち合わせの調整を含めてたくさんフォローしていただいて、信頼感が強まってお任せしたいと決めました。食に関わる部分やライフスタイルへの理解が深いこと、藤原社長ご自身が東川在住で何かあればすぐ対応していただけることも、アーケンを選んだ理由です。」


打ち合わせはどのように進めたか

住宅資金やローンに関わる部分はYさんが藤原社長と打ち合わせを担当。それが解決してからは、内装や建具・照明など暮らしのディテールに関わる打ち合わせの大半を奥さまが担いました。

設計は一級建築士の櫻庭仁志さん(一級建築士事務所ブヒズアーキプラン)が担当。3Dパースで完成後の空間をイメージしながら進め、現在はVRゴーグルを使って間取りや収納・窓の位置をリアルに体験できる環境も整えています。

奥さま:「内装や建具の色合いは、以前の家で買いそろえていた家具など私の好みをもとに提案していただきました。照明の一部はネットで輸入品を探して藤原社長に相談し取り付けてもらうなど、臨機応変に対応していただきました。注文住宅は決めることが多く、打ち合わせは10回以上重ねましたが、いつも楽しくワクワクする時間でした。」


顔の見える施工 着工前の食事会

アーケンには、着工前に設計・施工に関わる職人全員とオーナーが顔を合わせる食事会を開く習慣があります。Yさん邸では大工・左官・基礎など15人以上の職人が集まりました。

藤原社長:「私が大工だったころ、ハウスメーカーの現場ではお施主様にお会いすることなく家を建てることが珍しくありませんでした。顔を知らないまま建てると、職人の意識がお施主様ではなく雇用主に向いてしまいます。着工前に直接お施主様の思いを聞くことで、職人としてのプロ意識と責任感が生まれます。手抜きができなくなりますし、引き渡し後も自分が建てた家への愛着が続きます。お施主様にも家づくりを楽しんでいただける、その意味も込めて着工前の食事会を開いています。」

奥さま:「着工前に大工さんや職人さんを集めて食事会を開いてくれるという話を既に家を建てた友人たちにしたら、みんな驚いていました。現場に行くと一度話したことのある職人さんたちばかりで、仕様の相談もできましたし、職人さんたちが心を込めて家を建ててくれているという実感がありました。」


窓の外には一面の水田が広がります。春から夏は緑、秋には黄金色の稲穂、冬は白い雪原。四季折々の景色とともに、Yさん夫妻の新しい暮らしが始まりました。